「慢心するな」…といった言葉はその類語を含めると、日常で頻繁に使われる言葉といえます。 たった2文字のこの「慢心」という言葉、実はかなり深い意味があります。今回は、この「慢心」の意味や使い方はもちろん、慢心している人の特徴や、慢心しない方法などを見ていきます。
慢心は身を滅ぼす?
これまでの仕事ぶりが評価されて大きなプロジェクトに抜擢されたときや、スポーツのなどで格下に相手と対戦するときなどに、「慢心するな」などと言われたりしませんか?たった2文字のこの「慢心」という言葉、実はかなり深い意味を持っています。 そこで今回は、この「慢心」の意味や使い方はもちろん、慢心している人の特徴や、慢心しない方法などを掘り下げていきます。
慢心の意味とは?
慢心とは「自慢していい気になり、おごり高ぶること。また、その心」という意味です。 ちなみにこの「慢」という漢字は、訓読みで「あなど・る」と読みます。「おこたる」「心が歪む」「見くびる」「おごり高ぶる」などの意味があります。
慢心の使い方・例文
来年は東京オリンピック、パラリンピックがありますが、よくスポーツの試合などで、優勝確実と言われていた選手やチームがまったく格下の相手に1回戦負け…なんていうことが時々起こりますね。 そうした時のインタビューで「今回の負けは自分の慢心の結果であると、重く受け止めています…」などと沈痛な表情で語る選手や監督を見たことがあると思います。 おごり高ぶり、うぬぼれて相手を見くびっていた…などという場合に、この「慢心」が使われます。
Aさんはやり手の営業マン。これまで何度も全国売上ナンバーワンを獲得し、社長賞の常連です。このたび会社が大きなコンペティションに参加することになり、これまでの手腕を買われたAさんがプロジェクトリーダーに抜擢されました。 「この案件、必ず獲得しますよ。今回の競合にはこれまで負けたことがないですし、全然余裕です」と豪語していたAさんでしたが、いざふたを開けてみたら、仕事をライバル社にさらわれてしまいました。 こんな時、「Aさんはちょっと慢心していましたよねえ…」などというふうに使われます。
慢心の類語
「思い上がり」 つけあがること。いい気になること。うぬぼれ。 「おごり」 自分には力があるのだと相手や他の人を見下すこと。 「いい気になる」 自分を過大評し増長すること。
慢心している人の特徴・あるある
「慢心」の意味は再確認できたかと思います。自分への戒めも含めて、日常で使う場面が多いかもしれない言葉ですね。ここからは、慢心している人の特徴を見ていきます。
特徴1:自信過剰である
慢心している人は、ほぼ間違いなく自信過剰の状態にいると思われます。言い換えると、自己肯定感が必要以上に強い状態です。 自信を持つこと自体は決して悪いことではなく、むしろプラスに作用することも多いですが、自分自身に対する自信が実態を超えて過剰・過大になっていくと、慢心につながるわけですね。
特徴2:他者を否定する
自信過剰と反比例しますが、慢心している状態の人は、自信過剰になるにともない、相手や他の人を軽く見る、否定する、馬鹿にする…という状態に陥りがちです。こうしたことが続くと、周囲からは煙たがれる存在になってしまうかもしれませんね。
特徴3:自信の裏には不安があることも
意外に思われるかもしれませんが、自信過剰、つまり慢心の状態にいる人は、心の中で不安を感じている場合が少なくありません。 その不安を覆い隠したい、他人に知られたくない、ふたをしてしまいたいという欲求が強いことが、慢心の状態に向かわせる場合もあります。 また、慢心している人は、本当は不安ということを自分で気づいていない場合も往々にしてあります。
特徴4:快活で自由奔放に見える
慢心している人は、一見すると、もしくはその人のことをよく知らない人からすると、快活でリーダーシップがあり、自由奔放なプラスのイメージを抱きがちです。 しかし、ものごとは何でも表があり、裏があります。この適度なバランスが大切なのです。例えば「リーダーシップ」も、行き過ぎると単なるわがまま、自己中心的というマイナスイメージにつながってしまいます。
特徴5:自分のルール以外は認めないことがある
慢心している人は、いわば自信家の状態にいるわけです。自分のこれまでやってきたことや、方法に自信を持っています。それでいてプライドが高すぎる、慢心の状態に近づいていくにつれ、自分のルールや方法を絶対視する傾向が強くなってきます。 これが自分の中だけで完結しているのでしたら大して問題にはなりませんが、そのやり方を他者にも押しつけだすようになると、ちょっと厄介ですね。
慢心のデメリット
ここまでは慢心している人の「あ~、あるある」という特徴を見てきました。そもそも「慢心」という言葉の意味自体、あまり良いものではありません。 それが頭では分かっていながらも、人間はついつい慢心してしまい、他人に対して自分を良く見せよう…という部分があります。 ここからは、慢心のデメリットについて見ていきます。
デメリット1:「おれ様状態」になり他者を認めなくなる
慢心している状態というのは、根拠のある・なしはともかく、自信過剰でおごり高ぶった状態なわけです。こうした時、人は往々にして他人の意見を認めず、他人のやり方を否定します。 「自分のやり方がベストなんだから、それをやればいいんだ!」…なんていうふうに、いわば「おれ様状態となり、自己流を他者に押しつけることが出てきます。 ベストという以上、その根拠が明確ならばまだしも、根拠があいまいなまま押しつけられた側としては、当然、反発したり、腹立たしかったり、困惑したりします。これが続くと、慢心している・しがちな人は、周囲に敵がふえていくでしょう。
デメリット2:上から目線が強くなる
慢心している人に、役職や立派な肩書きがついていたりすると、大変です。そもそも職位が上であり、しかもそれに「慢心」が加わるわけですから当然、「上から目線」が強くなってきます。部下の人たちや周囲は苦労することが増えると思われます。 「デメリット1」でも述べた状態がさらに助長され、パワハラなど、各種ハラスメントにつながりかねません。ハラスメントは、仮にその人がどんなに仕事面で優秀であろうとも、やってはいけないことです。 「管理職としてはアウト」という評価が会社からは下されてしまうでしょう。こうなると、慢心が破局につながっていきます。
デメリット3:友人や家族とのコミュニケーションにも悪影響が
人間の心は、さまざまな要素から成り立っているといわれます。慢心している時に見られるような、他者を否定・批判するエネルギーは確かに誰しも持っています。 しかし、自分を客観的に見るエネルギーをバランスよく使いつつ、他者否定の「暴走」にブレーキをかけているわけですね。慢心が行き過ぎてしまうと、このブレーキが効かないような状態に陥ってしまいます。 つまり、自分自身を客観的に見ることが難しくなってしまうわけです。その結果、最初のうちは仕事面だけの慢心であったのに、その慢心が次第にプライベートにまで浸食してきて、大切な友人や家族とのコミュニケーションにも悪影響を及ぼしてしまいます。
デメリット4:成長できない
人間の心がさまざまな要素・エネルギーのバランスの上に成り立っていることは前項で述べましたが、慢心してこのバランスが崩れてくると、その慢心の度合いがさらに加速すると思われます。 慢心というのは、コミュニケーションのパターンとしては「自己肯定+他者否定」になります(本来は「自己肯定+他者肯定」が理想です)。
人間は他者とのコミュニケーションを取らずして生活していくことが難しいですが、このコミュニケーションが「他者否定」というものを内包しているとしたら、その人のさらなる成長は望めないでしょう。 慢心する前の段階では、その人は確かに能力が高かったはずですが、その能力も生かすことができなくなってしまいます。
デメリット5:いざという場面で大失敗する
ここまで慢心のデメリットをいくつか列挙してきましたが、通常の状態の人間ですらあてはまることが多いものばかりです。ましてや、慢心している状態の人であれば、これらのデメリット、悪影響を受けやすいといえるでしょう。 言ってみれば周囲を敵に回すことをやってきてしまっているので、いざという時に協力を得られません。仕事でも、自分一人で完結するのではなく、他部署や他の人の協力を仰がなくてはならい大事な場面で、残念ながら失敗に終わる可能性が高まります。
慢心しない方法
ここまでは、慢心することによるデメリットを列挙してきましたが、いやはや、どれも大変で、ろくなものではないですね。 慢心してこんなふうにならないためにも、ここからは、慢心しないための方法や心がけを見ていくことにします。
なお、心というものは形がなく目に見えません。したがって、仮に「自分は慢心しなくなった気がする」と感じたとしても、それを測定することができないため、漠然とした感覚にすぎません。 性格や心の状態を変えたいというときは、目に見えて分かること、すなわち「行動」をコントロールしていくと成果が出やすく、かつ効果測定しやすいため、以下に列挙する方法に、具体的な練習方法もそれぞれ書き添えました。 一朝一夕に手に入れられるものではないかもしれませんが、根気よく続けてみてください。
慢心しない方法1:謙虚になる
慢心している人は、客観的な根拠の有無にかかわらず自分に自信がある状態ですから、他人の意見になかなか耳を貸そうとしない傾向にあります。 慢心しないようにする基本としては、まずは謙虚になることです。具体的には、以下のようなことを心がけると有効です。
●自分の中で答えが出ていることであっても、他人に意見を求めてみる(もしかしたらより良い答えに到達できるかもしれません) ●意見だけでなく、どうしてそう思ったのか、経緯や感情面も聞いてみる。 ●そのためには、相手の話をさえぎらず、最後まで聞く(→これは簡単なようでなかなか難しいです。特に意識してください)。
慢心しない方法2:自分のこだわりを少し緩める努力をする
慢心している人はどうしても自分の方法論やこだわりに自信を持ち、それが強くなります。極端になると、自分のやり方以外は認めない!ということになります。 こうならないために、自分が頑なにこだわっていること・ものを少し緩める努力をしてみましょう。 具体的には、以下のようなことを心がけると有効です。
●そもそも自分がこだわっていること、正しいと思うこと、信念を紙に書き出してみる(おそらく、〇〇でなくてはならない、〇〇であるべきだ…という表現とフィットするはずです)。 ●書き出した項目を見て、どうすればもう少し緩められそうか考えてみる。場合によっては他者に意見も仰いでください。
慢心しない方法3:他者をほめる/感謝の言葉を伝える
慢心している人、もしくは慢心しやすい人というのは、一概に、他人をほめることが苦手です。苦手というよりも、そもそもほめる習慣を持っていない傾向が高いです。 同時にこういう人は、他人からほめられた時も、感謝の言葉をきちんと伝えていません。ちょっと頭を下げるジェスチャーをしたり、軽い調子で「ああ、どうも」と言うことで済ませてしまうなど安易な行動が目立ちます。 慢心しないためには、他者をほめ、他者からほめられた時などは感謝の言葉を伝えましょう。 具体的には、以下のようなことを心がけると有効です。
●ご家族と同居している場合は、(そのご家族があなたから)ほめられた回数、ありがとうと言われた回数を(感覚でいいので)チェックしてもらえるように頼んでみる。 一見、簡単なことに思えますが、この方法は、家族のみんなが「プラスの言葉」に対して敏感になるため、家族間のコミュニケーション改善にとても効果を発揮します。 ●例えば部下から業務報告を受ける時などは、仕事の手を止めて、きちんと相手のほうに向きなおって、目を合わせながら聞くということを自分に課す。
慢心しない方法4:より良い「話の聞き方」を模索する
慢心している人は他者の意見を受け入れない傾向がありますが、そうならないためには、相手の話をしっかりと丁寧に聞く練習が有効です。 「他者をほめる/感謝の言葉を伝える」とかぶりますが、聞き上手になることは、相手ときちんとコミュニケーションが取れていることですから、これが上手くできるようになってくると、「慢心」からはどんどん遠ざかり、「謙虚」に近づいていきます。 具体的には、以下のようなことを心がけると有効です。
●ミーティングなどの時は、相手の気もちも必ず確認する。 ●聞くが7割、話すが3割くらいのイメージでの会話を心がける。 ●話を聞く時には、意識してうなずき、あいづちなどを多用してみる。最初はぎこちなく感じますが、これは慣れです。
●テレビのトーク番組などを見ている時は、出演者の話したことに対して、「ああ、そうなんですね」「そんなふうにお考えなんですね」……などの言葉を実際に声に出して言ってみる (→心の中で思うだけでなく、実際に言葉に出してみるというのが大事なポイントです)。
慢心とはすなわちコミュニケーション不良の状態
「慢心」というテーマで様々な角度から見てきましたが、いかがだったでしょうか? ここまでお読みいただいて何となくお気づきかと思いますが、慢心している人というのは、ほぼ確実に周囲とのコミュニケーションが円滑にいっていません。 そうなると、相手の人は不快な感情をもつことになり、余計にコミュニケーションが悪循環に陥ります。
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